なんてったって高二病

肩の力抜いて

吐き出したい事が、一つできた。

今日は、正直堪えた日だった。

一つには、あまり過去問の出来が良くなかったこと。最低限はクリアしているのかもしれないが、それでも奮起せねばならない結果だ。


もう一つは、旧友を失った事。

肉体的に死んだ訳ではない。ただ、彼はもう僕にとっては別種の存在なのだ。

ぶっきらぼうな接し方でも、体裁を弁えていなくとも、それなりに重ねた交流が最低限の関係を築いていると、信じていた。僕だけが。

詐欺にあっていた事を知った時のようや、怒りと困惑とが入り混じった呑酸に似た感覚。

しかしその感覚がいまいち言葉にならないのは、きっと僕が自分のことを、彼の言う歳を食っただけの人間だと理解しているからかもしれない。


クイズが強いとか、世代の三強とかもて囃されていたが、まともに努力したのなんてせいぜい一年くらいで、abcを通過してからはまともに前に進む気さえ無かった。

適当にやってりゃ高校生以下の大会なんてどうにかなるし、評価は得続けられると思っていた。実際どうにかなった。どころか、テレビにまで出れてお釣りが来た。

それでも、他の三人は俺より前に進んでいった。♪はabcで稀な成績を筆記、本戦ともに残している。宮ちゃんは一年の時からテレビに出て、大会も筆記でどんな位置からでも上位に食い込む勝負強さで魅了した。谷口は遅咲きながら努力を重ねて、3年にはテレビクイズで優勝した。

俺も彼らみたいなプレイヤーになりたいと何度も思った。それでも、なれなかった。俺がろくでもない人間だからだ。強敵と戦う主要登場人物を尻目に隅で解説キャラに成り下がり、挙句彼らにライバルだと口では主張する状況を是としているからだ。


部長としての実務もそうだった。やりたい事だけを主張して仔細は思慮に入れないクソガキ。周りのサポートに支えられているのに気付かずに、母校のクイ研を引っ張ってきた王様だと思いこむ。その上、引き継ぎのファイルを破損させるという無能さ。川田さんに見放され、水畑に心を閉ざされるのも当然だ。


俺だってなりたかったよ。目標に向かって愚直に進めて、仕事を有能にこなす、何より自分の能力を過信しない人間に。でも、なれなかった。



一方で、あの若造なんかに言いくるめられて悔しくないのかと問う自分もいる。

俺は俺で、別に誰に何を言われようが大したこたぁ無いね。こういうスタンスで生きてきたじゃないか。

実際、俺のしてきた善もあるだろう。俺は俺がどれだけできないやつか知っているが、どれだけの事をしてきたかも知っている。

家族の別居の時には決着の糸口を作った。老々介護で疲れた祖母の話し相手になっている。

エイジも相談相手に俺を選んでくれたのは、それなりの信頼があるからじゃないのか。釜ちゃんが燻ってた時にあげたアドバイスは、彼の優勝に数パーセントの助力をしたかもしれない。同期が部活が嫌になった時は率先して一時的な居場所を設けた。

俺がいた事が、同期の競争意識を上げられたかもしれない。良くも悪くも早稲田と開成の仲を深められた。

文化祭で部門賞が取れたのは、宣伝策が奏功した部分もあったろう。

だいたい俺、実戦で猪俣以外の下の世代に負けた事は殆ど無いし、アイツにも1対1で何回も勝ってるぞ。勝負の世界にいる以上そこは譲れねえなあ。


俺は確かに個人としての態度が誇れる人間ではなかったけど、そこそこの強さはあったし、友人や後輩の為には労を惜しまない素敵な所もあるじゃないか。鵜呑みにして全否定するなんて愚かな真似はすべきではないのではないだろうか。


そうは言ってもしかし、僕がこれ程までインパクトを受けているのは、彼が図星を突いているからだろう。僕は、自分が是と思う事に果たしてエネルギーを尽くしてきたかと問われると、自信はあまり無い。

個としての能力の無さは自分としても望む所ではないし、どころか周りに迷惑を掛けかねない。

何より僕は、難題に嬉々として挑む人間でありたい。自分の是とする旨をかつ信じかつ疑い、その時々に力を尽くすべきだと思う。その思いを蘇らせてくれたという点では、彼に感謝だ。精進せねばなるまい。


以上の所で、心境の整理はついた。実に穏やかかつ情熱的な気分だ。

ただ残る勘案が二つ。

一つは、僕がこれから彼にどう接するかについてだ。ある程度距離を取るべきだろう、とは思う。しかし、例えば同じサークルに入った場合…。共演NG色を露わにすると周りにも迷惑を掛けるだろうし、最悪脱会も考える所だ。まあそれは追い追い。

もう一つは、彼と同じ印象を共有している人がどれだけいるのか。俺も流石に、「こいつクソだな」と僕を心の底から見放している人間とは自ら仲良くするつもりは無い。相手に迷惑だろうし。勿論、他人の内心なんて知れたものでは無い。そこはある程度、嫌な感触のある人には自分なり他人に頼るなりで探っていくしか無いか。


普通のブログならこんな重い話を延々と書けないだろうけど、俺は今の所これの読者は自身の他一人しか知らぬ。そこも、こういうブログの良い使い道。